(前回の記事は こちら

前回の記事では、私がいかに帰国子女に対して過剰な幻想を抱いていたか思い知った、という話をしました。


Photo by Abe Kleinfeld

でも、まあ、それって仕方ない部分もあると思うんです。だって、英語ができない私からすれば、外国人を相手にペラペラやれる人というのは、どこからどうみても「英語のできる人」。その人の英語力が日常会話レベルなのか、通訳できるレベルなのか、判断のしようがないからです。

現状では、多くの日本人にとって「英会話ができる」というのは、ある種の特殊能力です。「バイオリンが弾ける」とか「マジックができる」みたいな能力に近いものだと私は思ってます。結婚式の余興で誰かがバイオリンで何か弾いたら「すご〜い!!!」ってなるし、合コンでトランプマジックの一つでも披露すれば、やっぱり「すご〜い!!!」ってなりますよね。プロからみたら素人芸でも、素人から見たらプロのワザにみえる。「英語ペラペラですご〜い!」という帰国子女バイリンガル幻想も、そういうところに問題の根っこがあると思ってます。

実際、私も「子どもがバイリンガルになったらいいなァ」というゆるふわな願望を持っていただけで、何をもってしてバイリンガルと呼べるのか、そのゴールはどこにあるのか、といった具体的な条件についてはまったくもって無知でした。

そんな反省をふまえて「バイリンガルについてもっと知らなければ!」と思ったのが、このブログを立ち上げた最大の理由だったりします。


「日常会話ができる」ことと「バイリンガルになる」ことのちがい


バイリンガルについて考えるには、そもそも「バイリンガルとは何ぞや?」というところから考えなければいけないんですが、その定義はものすごくむずかしいです。ネットや本でいろいろ調べてみた結果、私なりに考えた答えは「2つの言語をビジネスレベルで使いこなし、他者と問題なくコミュニケーションできること」。とりあえず、このブログではバイリンガルという言葉をそういう意味で使っていこうと思います。

※ 多言語社会では、母語以外の言葉が日常会話レベルでも「バイリンガル」と定義することもあるそうです。
参考リンク 三省堂ウェブサイト「世界ことば巡り」第5回『バイリンガルの定義』

で、いろいろ調べていくうちに、バイリンガルの対となる概念として「セミリンガル」なる言葉があると知ったんです(差別的なニュアンスを含むということで今は「ダブル・リミテッド」という呼び名も広がってきているそうですが、便宜上ここではセミリンガルという言葉を使います)。

セミリンガルとは、昨日のエントリでもすこし触れたとおり、母語(日本語)も第二言語(英語)も日常会話レベルにとどまり、学校での勉強に必要な能力(読み書き)が不十分な状態のことをいいます。帰国子女のなかにも、この「セミリンガル状態」においちいる人は、少なくないそうです。

そんな帰国子女の実態について詳しく紹介し、早期英語教育に大きなヒントを与えてくれた本があります。

著者は、10年以上にわたってアメリカに駐在する日本人の子どもたちに日本語学習を指導していた方です。およそ800人におよぶ子どもたちとの関わりから、子どもの立場から見た「海外生活の本音」や「バイリンガル問題」にも言及しています。とくにハッとさせられたのが、本の最初に書いてあった次のような指摘です。

「英語は必要だから子どもの時から教えたほうがいい」 と考える発想の背後に、英語を苦手とする大人、そして英語を習得するのに苦労した大人の抱く「甘い幻想」が隠れているからだ。(中略)たとえ母語とともに外国語を学習する能力が子どもに潜在的に備わっているとしても、「動機づけ」「適切な環境」「適切な方法」のすべてがそろっていなければ、バイリンガルとして育たないという認識が抜け落ちている。

『英語を子どもに教えるな』より

単純に海外に住んだだけでは、子どもはバイリンガルとして育たない。いや、耳の痛いお言葉です……。

本の中には、さまざまな帰国子女たちのケースが「本当にあったこと」として紹介されています。日常英会話はできるが、読み書きに難があり、日本語は小学校低学年の漢字が読めないという中学3年生。英語も日本語も幼児レベルで、現地校の先生から学習障害といわれてしまった小学生……。

海外にいれば、日本語教育が難しいのはかんたんに想像がつくのですが、なぜ英語環境で育っているのに英語までも中途半端になってしまうのか。著者は、子どもがバイリンガルになるためには「動機づけ」と「適切な環境」、「適切な方法」がすべてそろっている必要がある、と主張しています。それはつまり、そのどれかひとつが欠ければ、子どもにはセミリンガルというリスクがつきまとうということなのです。

次のエントリからは、バイリンガル教育で大切なポイントについて、ひとつひとつシェアしていこうと思います!

つづく。

 
このエントリーをはてなブックマークに追加 Share on Tumblr