(前回の記事は コチラ

前回の記事に書いたとおり、韓国では1997年のIMF経済危機以降、英語教育がどんどん過熱していきました。

英語力があれば、いい企業に就職できる。英語ができれば、リストラもされにくい。英語が話せれば、海外に進学したり海外で就職することだってできる……。未曾有の経済危機を通じて、韓国人のあいだにそういう考えが定着したからです。

さて。2000年頃から流行りはじめた早期留学ですが、その中には中高生のみならず、小学生も少なくなかったといいます。教育科学技術省、韓国教育開発院のデータによれば、1998年時点で200名ほどだった小学生の留学者数は、2006年には1万4000人近くまで達しました。なんと約70倍ですよ!
韓国の早期留学者数
(出典)教育科学技術省「小・中・高留学生出国と帰国の統計」韓国教育開発院「年度別早期留学生数(学校級別)」等より作成

留学先としては、やはりアメリカがいちばん人気なのですが、2位以下は時代とともにけっこう変動しているようです。大阪教育大学教育学部の小林和美准教授による研究論文「韓国における早期留学の変遷」によれば、

比較的安い費用で英語を学ぶことのできる東南アジアへの留学生数が増加し、2006年にはアメリカ、カナダに次いで第3位、2007年にはアメリカに次いで第2位の留学先となった(中略)早期留学生の留学先は、第IV期(2008年〜)になって東南アジアが全体の2割を占めるようになり、アメリカに次ぐ留学先としての地位を固めた。東南アジアへの早期留学生数の半数以上を初等学生が占めており、初等学生にとって東南アジアはアメリカと並ぶ留学先となっている。中学生、高校生でも東南アジアへの留学生の占める割合は第III期(2003〜2007年)に比べて上昇しており、アメリカに次ぐ留学先となっている。

だそうです。2006年ぐらいから東南アジアへの留学がびょーんと伸びてるんですね。東南アジアでひとくくりになってしまって具体的な国名のデータがないのが残念無念なのですが、おそらくフィリピン留学は相当なシェアを占めているはずです(その理由はまた別記事で!)。

さて。このように爆増した早期留学ですが、海外に留学するには相応のコストがかかります。また、ボーディングスクールに入学させるような場合を除いて、小学生の子どもが1人で留学するのは現実的に難しいため、多くの場合、お母さんが同行することになります。そうなると、お父さんは留学費を捻出するためにも、韓国に残って働く必要があるわけです。

そんなお父さんたちの新しい呼び名について、ウェブマガジン『ウェッジ・インフィニティ』の「過熱する韓国の英語教育 早期留学ブームの弊害も」(2014年10月6日)という記事に興味深い一文があったので紹介します。

経済的余裕があり、頻繁に子どもに会うことのできる鷲パパ(カルメギアッパ)、年に数回しか家族に会えない雁パパ(キロギアッパ)、金銭的に余裕がなく子どもに会いにいけないペンギンパパ(ペンギンアッパ)という言葉が生まれ、英語教育のために家族と離れ、仕送りをする寂しい父親を表す、早期留学の象徴語となった。

この記事にも紹介されているとおり、早期留学には負の一面(デメリット)もたしかにあります。金銭的に大きな負担がかかることや、母語である韓国語の習得に支障が出る、子どものメンタル面への影響、そして家族が長期間、離ればなれで暮らすことによる一家離散のリスクなどなど……。2007年頃からは一転して早期留学がはらむ問題点が、社会的に大きくクローズアップされたのです。

ちょうどリーマンショックで景気が悪くなった時期とも重なり、その頃から過熱気味だった早期留学ブームは、だんだん下火になっていったといいます。もちろん、早期留学がなくなったわけではありません。むしろ小学生の早期留学は増えている、なんてデータもあるので、一過性のブームを経て、英語教育の一つの選択肢として定着したのかもしれませんね。

次回は、韓国国内の英語教育への取り組みについてもリサーチしてみます。


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